2020年上半期にして、年間最大のインパクトを残していると言っても過言ではない、新型コロナウィルス。今回は、このコロナに対するマーケティング戦略として日本花き振興協議会の面白い事例をご紹介する。
日本花き振興協議会は、2017年5月に「2020 東京オリンピック・パラリンピックという国際的なイベント開催の機会に、我が国の高品質な花きを紹介し(中略)花き業界の活性化・発展に資することを目的」として、生産者団体・花卸・生け花・フラワーデザインなど9団体が加盟して発足した。
この目的を決めた時に、「世界最大のイベントに日本の緑と花の文化を見せよう」と関係者一同が高揚感に包まれていただろうと容易に想像でき、現在のオリンピック・パラリンピックの延期確定、さらに外出自粛制限も続く日常とのギャップに言葉を失う(注:執筆時は2020年5月7日)。
2020年3月24日にオリンピック・パラリンピックの延期が確定し、4月7日に緊急事態宣言が発出される中で、各種イベントの中止、ホテル・百貨店など施設の休館が相次いだ。花の需要が一気に減り、4月下旬からはフラワーロスの言葉で行き場を失った花が捨てられる様子が報道されるようになった。その中には母の日用の花もあった。
自粛による行動制限・消費意欲の減退により、母の日用の花の出荷が例年通りでなかったのは想像に難くない。母の日の市場規模は1,100~1,200億円、そのうちの半分の約600億円が花関連と言われている一大イベントの日なのである。
何か対応がないかと思案する中で決定されたのが、4月24日に発表された「今年の5月は母の月」キャンペーンだ。母の日を一日だけでなく、5月を通して一ヶ月実施するというもの。
発表当時は自粛期間がいつまで続くか分からない中だったが、5月下旬には母の日当日(5月10日)より自粛が落ち着いて商業施設が再開しているのではないかと想定したのであろう。そして消費者の「自粛生活で遅れて母の日を贈ることに対する罪悪感」を解消するという目的のために、“母の月”キャンペーンとなったのである。
このキャンペーンは一応、コロナ禍の中で花を用意できなかったことを理由に「遅れてゴメン」を言う気まずさ解消を目的としている。しかしながら以下のチカ’s ポイントにて述べる効果を狙ったのが真の目的であろう。
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